アウトブリード
 異系交配、異系繁殖のこと。サラブレッドの生産は近親交配(インブリード)をもとに作られてきたが、比較的血縁関係の遠いもの薄いものをアウトブリードと言っている。とはいえアウトブリードかインブリードかは程度の問題であって、どこを境にアウトブリードと決めるのか、明確かつ共通の定義はない。5代前までを表記した血統表が主流である現在、5代前まで遡っても父と母に共通の馬が現れないものをアウトブリードと呼ぶことが多い。アウトブリードには、5代血統表中に同一の馬が1頭も現れない型と、父(母)がインブリードを所有していても、配合相手馬とはまったく血縁関係のない型の2種類がある。専門家の中には、この2種類を厳密に区別して、後者のみをアウトブリードと定義(前者はアウトクロスとして分類)する人もいる。いずれにしても、父の血統及び母の血統に同じ馬名が現れないという点では共通している。
青毛(あおげ)
 被毛(短くて細く全身に密生している毛)、長毛(たてがみ、まえがみ、尾毛など被毛に比べ長い毛)ともに黒色のもの。一般的に全身真っ黒な毛色の馬。また青鹿毛(あおかげ)は全身ほとんど黒色だが、目の周囲、口辺などがいくらか褐色を帯びたもの。
アオる
 発馬の状態で、発走直前、あるいはゲートの開いた瞬間にゲート内で立ち上がったりして、前肢を上げた格好で発走すること。レース経験の浅い新馬戦などにこういった状態を見せる馬が多いが、発馬の際アオッて出ることが癖になっている馬もいる。成績表の通過順の上にアオルと書いてある場合、これはそのレースで番の馬がアオッて出たということで、他の馬よりスタートで損をしているということである。
赤旗(あかはた)
 発走時刻の約1分前に発走委員が発走台に上がって、発走準備開始をうながすために振る旗。また発走のやり直しの場合もこの赤旗を振って合図する。昔は繋駕速歩競走(昭和43年廃止)のことを(発走合図に赤い旗を使っていたため)俗に赤旗と言っていた。
赤ランプ
 着順掲示板にあり、レースが確定したときに「確」の字とともに点灯される赤ランプのこと。これで到達順位のとおり着順が決定されたことを示す。また、青ランプは「審議」の信号で、2013年から着順掲示板に掲示された馬の着順に変更の可能性がある場合に「審」の文字とともに点灯される。ただし、一部の競馬場では着順掲示板が三面マルチターフビジョンの中にあるので、ランプは使用せず、赤背景白抜き文字で「確定」、青背景白抜き文字で「審議」と表示される。
上がり(あがり)
 ゴールから逆算して3ハロン(600メートル)のこと。また半マイル(800メートル)を合わせて言うこともある。「上がり50―38」といえば上がりの半マイル50秒、3ハロン38秒ということになる。この上がり3ハロンに要したタイムを上がりタイムと言っている。競馬場の着順掲示板の下(または横)に出ている数字が、そのレースで要した上がりタイムで、半マイル、3ハロンそれぞれのタイムだ。上がりタイムの速い遅いでそのレースの性格がわかるほどで、重要なデータのひとつ。本紙では各馬の上がりタイムを成績表ならびに能力表成績欄に記載している。
上がり馬(あがりうま)
 調子の上がってきている馬。一般には下級条件から短期間のうちに2連勝、3連勝と一挙に上位クラスに上がっていく馬をいう。上昇線を辿っている馬は不利な条件(斤量、道悪など)を克服することが多い。
あがる
 牝馬が競走生活にピリオドを打ち、繁殖牝馬として牧場に帰ることを「繁殖に上がる」または単に「あがる」と言っている。地方(公営)で走っていた馬が中央競馬に登録、出走してくる場合にも「中央に上がる」という。また「カイバがあがる」という場合は馬が食欲不振になることをいう。
朝飼葉(あさかいば)
 馬に飼料(飼葉)を与えることを飼い付けというが、通常朝夕の2回に分けて与えている。朝の調教が終わった後に付けられる飼葉のことを朝カイバといっている。冬季に馬場が凍ったり雪が降っていたりすると、朝カイバを付けた後に運動、調教など行うこともある。
脚いろ(あしいろ)
 脚勢のことを脚いろという。能力を出し切ってスピードが衰えたとき“脚いろが悪い”といい、まだ余力があり、追えば伸びる状態のとき“脚いろがいい”というように使う。似たような言葉で脚がある(ない)というのがあるが、脚があるという場合は、脚いろがいいと同じ意味にも使うし、決め脚がある、能力があるという意味から“一瞬の脚がある”“勝つ脚がある”などと使われる。逆に脚がないという場合は脚いろが悪いという意味、あるいは他馬と比べて能力がないという意味で使われる。また“脚をなくす”というのはレース前半に脚(能力)を使い末脚を失うことで、最後の踏ん張りの利かない状態をいう。また、“一杯”“強目”“馬なり”などは脚いろを表す言葉。
芦毛(あしげ)
 原毛色は栗毛または鹿毛ないし青毛等であるが、馬体全般が白色(灰色)で、白い毛に黒色または濃褐色の刺し毛があるもの。生後間もない幼駒は原毛色に近い毛色であるが、月齢、年齢が進むにつれ白色の度合を増す。サラブレッドの芦毛の血統はすべてオルコックアラビアンから出ている。
脚抜き(あしぬき)
 ダートにおいて馬場状態を表す言葉で、いい、悪いと合わせて使う。脚を取られ思うように走れないとき「脚抜きが悪い」と言い、同じように見た目悪い馬場でも走りやすい状態のとき「脚抜きがいい」というように使う。
汗取り(あせとり)
 馬と人間の両方に使われる言葉。馬の場合は馬体が重く、背肉、腰部、頸の脂肪が取り切れないようなとき、鞍下に毛布、カッパ、ビニールなど風通しの良くないものをかけて、引き運動、追い運動などして、発汗をうながし、汗と一緒に余計な脂肪をとる。人間の場合は体重の重い騎手が体重の調節(減量)を図るために行うもので、蒸し風呂に長時間入浴したり、カッパを着てランニングをしたりして発汗によって体重の調節をする。
当て馬(あてうま)
 種付けをするとき、牝馬の発情の有無を調べるために、牝馬に接近させられる牡馬のことで、試情馬ともいわれる。その馬自体は交配させられるわけでなく、一般には“どさんこ”か中間種の牡馬が使われているが、中には種牡馬でありながら、種付け希望の牝馬がいないため当て馬にされている馬もいる。
後検量(あとけんりょう)
 レース後騎手が決められた斤量で騎乗していたかどうかを調べること。7着までの騎手と、裁決委員から指定された騎手は所定の場所で脱鞍(他人の手を借りずに騎手自身で行う)し、後検量を受けることになっている。その後検量の目方が前検量に比べ1キロ以上増減のあったときには失格となる。
穴(あな)
 人気のない馬が勝ったり、2、3着に入って、好配当になったとき、“穴が出た”という。この穴を出した馬を穴馬というが、人気馬を負かす可能性のある馬のことも穴馬といっている。また人気馬以外の馬で予想以上に人気(馬券が売れている)になっている馬を穴人気になるという。ただ、こういった穴人気の馬は実力以上の評価をされていることが多く、穴狙いのファンは穴人気になるような馬は狙わないものだ。
穴場(あなば)
 馬券(勝ち馬投票券)を売る窓口のこと。昔は握りこぶしがぎりぎり入るように板を円形に切り抜いた穴だったことからその名がついた。現在は形に関係なく穴場というが、馬券売場という人の方が多くなっている。
鐙(あぶみ)
 騎手が足を乗せる馬具。鞍の付属具で鞍からあぶみ革によって吊るされているもので、騎手が自分の体を安定させたり、手綱や鞍を自由に使うために足先に力を掛けるために必要。鐙に足を乗せたりおろしたりすることを“鐙を踏む”“鐙を外す”と言っている。
アラアラ
 「3角でもうアラアラだった」などと騎手がレース後の話の中で使ったりすることからも分かるように、手応えが怪しくなり余力のなくなった状態のことで、バテてしまったという意味あいに使われている。
アラブ
 純血アラブの原産地はアラビア半島。しかし、一般に競走に使われているアラブといわれている馬はアングロアラブまたはアラブ系種で、純血アラブとは違い、アラブよりむしろサラブレッドに近い体形、能力を持っており、アラブ血量25%以上を有する馬に限られている。また、アングロアラブとはアアと呼ばれるもので、アラブとサラブレッドの交配によって生産された馬。サラのスピードにアラブの持久力を調和させる目的で作られたもので、軍馬用に考えられた交雑種である。
併せ馬(あわせうま)
 調教で、2頭、3頭あるいはそれ以上の頭数で並んで走らせることを、単走(1頭で走らせること)に対して併走、あるいは併せ馬という。馬に競争意識をつけるために行う場合が多く、2歳馬のデビュー前などはほとんどの馬が併せ馬で調教される。併せ馬をすると競り合うので単走のときに比べタイムが速くなるのが普通。
あんこ
 見習い騎手の俗称で、あんちゃんと呼ばれることもあり、「あの厩舎のあんちゃんは乗れる」などと使われている。また騎手になる前の騎手候補生のことを同じように言うこともある。騎手候補生のことを赤帽ということもあるが、これは調教場で赤いヘルメットをかぶっているため。
鞍傷(あんしょう)
 馬の背中上腹部などにできる外傷で、鞍の使用法(置き方)が不適当だったり、馬の体と適合してない鞍を使用したために起きるもの。馬の体形によって鞍傷を起こしやすい馬もいるが、そういった馬には鞍下に毛布を敷いたりして予防する。鞍傷がひどくなると騎乗できなくなり、出走不能につながることもある。
鞍上(あんじょう)
 「鞍上が替わって」とか「鞍上強化」などと使われるように騎手(ジョッキー)のこと。“くらうえ”とも言うように鞍の上に乗っているという意味。
アーニングインデックス
 種牡馬の優劣を判定するためのひとつの目安で、出走馬1頭あたりの収得賞金の平均値を1として、各々の種牡馬の産駒の平均収得賞金の割合を数値で表したもの。1.00が平均となり、数値が大きくなるほど産駒の獲得賞金が多いことを表す。
これを算式にすると
(産駒の総収得賞金÷産駒の出走頭数)÷(出走馬総収得賞金÷総出走頭数)となる。


息を入れる
 レース中にひと息入れること。スタートからゴールまで一気呵成に走ることはとても無理で、道中競り合う形で走っていると息が入らなくてバテてしまうというケースはよく見かけるし、後方から行く馬でもうまく息が入らないと最後のスパートが利かず、追い込み不発に終わることになる。うまい騎手はこの息の入れ方が上手なものだ。またレース間隔を開けることをひと息入れるというが、使い込んでいて疲れを取るときやリフレッシュを図るときで、故障で休養するときにはいわない。息が入(はい)るという場合はレースや調教の後、息の上がった状態から、通常の呼吸の状態に戻ることで、「息の入りがいい」というように使う。
育成牧場(いくせいぼくじょう)
 牧場で生産された馬が競走馬としての基礎的訓練や調教をする牧場。大きな生産牧場では育成のための施設も備えているが、小規模の生産牧場では調教コースなどを持てないため、生産地に育成調教の場を作るようになった。これが育成牧場で、おもにデビューまでの育成を行う。このほかに競走馬の休養、調整を行うための育成牧場もあり、これはトレセン近くに調教施設を持ち、競走馬の仕上げの一端を担っている。入厩頭数が限られているため、馬の入れ替えなどにこういった育成牧場を利用する厩舎も増えている。
1完歩(いちかんぽ)
 馬の歩幅のことで、走っているときの1完歩は7〜8メートルといわれている。この完歩の大きさとピッチでその馬のスピードが分かるわけだが、調子のいいときほど完歩は大きくなり、1ハロンの歩数で調子の良し悪しを見分けている調教パートナー(騎手など)もいる。
1馬身(いちばしん)
 馬の体が伸び切った姿勢で鼻端から臀端までの長さをいう。長さは馬格によって異なるが、普通は240〜250センチとされている。着差を表す競馬ならではの単位で、通常1馬身差は0.2秒とされている。
逸走(いっそう)
 決められた走路から大きく外れて走ること。内コースと外コースに分かれているところで逸走するケースが多いが、決められたコース内でもラチ沿いまで飛んでいくような場合は「逸走した」という。走路外に逸走したあと競走を続けるためには逸走した地点まで引き返さねばならない。また、逸走した馬は一定期間出走を停止され、期間満了後に再審査に合格しないと再び出走することはできない。
行ったきり
 逃げ馬がそのまま勝ってしまうことで逃げ切りとほとんど同じ意味。行ったままともいうが、2着馬も逃げた馬について行ったとき、レースそのものについて“行った行った”のレースといい、行ったきりのレースともいう。
一杯(いっぱい)
 脚いろを表す言葉で、脚力に余力がなく加速できなくなった状態を「一杯になる」といい、脚力を出し尽くしたことをいう。調教やレースで“一杯に追う”という場合は馬にまったく余力がなくなるほど騎手が手綱をしごき、またはステッキを入れるなどして追うことをいう。また、一杯になった状態を“お釣りがない”などともいう。
一般(いっぱん)レース
 特別レース以外の競走。「新馬」「未勝利」をはじめ「4歳以上〇勝クラス」など。平場戦ともいう。斤量の定められた特別競走と違って見習い騎手の減量の恩典のあるレースでもある。
一本かぶり
 出走馬のうちで馬券の売り上げが極端に多くなる馬のことを“一本にかぶる”というように、断然人気になった馬のことを指す。また連勝の組み合わせでも強力な馬が2頭いてその組み合わせだけが売れるようなときも“一本かぶり”とか“一本にかぶった”などといっている。
イレ込む
 イレる、またはじれるともいわれ、馬が興奮したり、何かに気を使って落ち着きのない状態のこと。こういった馬はレースの始まる前(装鞍所、パドック、返し馬など)にスタミナをなくしやすいし、またゲートのミスや折り合いを欠く原因ともなり、レースで全能力を発揮できないことが多い。パドックでは気合の乗っている馬と見間違えやすく、発汗状態(異常に多いときはイレ込んでいる)を注意深く観察したい。また、イレ込み癖のある馬をイレッポといっている。
イン
 インコースの略。通常追い込む場合は前の馬の外側を通るが、内側から交わしていくとき“インを突く”“インをスクう”などというようにコースの内側という意味。また逃げ馬がイン一杯(ラチ沿い)を通ることを距離損がないことから経済コースを走ったという。“インで詰まる”“インから抜ける”などよく使われる競馬用語。
インブリード
 近親交配のことで、血統の5代前までに同一の祖先(種牡馬)をもっている配合のこと。サラブレッドを生産する場合、意識的に近親交配を行うケースも間々ある。近親馬であることを表記するとき〇〇(馬名)の3×4などと表し、その数字は世代数を示す。ノーザンダンサーの3×4と記されていれば、3代目と4代目にノーザンダンサーが入っていることだし、5×5×5とあれば、5代目に3回入っていることになる。アウトブリード(異系交配)の項参照。


内回り(うちまわり)
 競馬場によっては内回りと外回りの2つのコースをもっており、中山では向正面、京都、阪神、新潟では3、4コーナーにかけて内、外に分かれている。中山の場合は極端に小回りになるし、京都、阪神、新潟では直線が短くなる。
ウッドチップコース
 繊維状に粉砕された木片を砂の上に敷き詰めた馬場で栗東、美浦のトレセンや函館競馬場で盛んに使われている。この馬場はダートコースに比べクッションが非常に良く、脚への負担が少ないのが最大の特徴。また、馬場を管理、維持する上でも凍結しにくいし、水はけも良いので欧米ではかなり前から取り入れられている。
馬七人三(うましちひとさん)
 馬が七分で人が三分ということで、競馬は馬の力だけで決まるものではなく、鞍上(騎手)の及ぼす力も三分あるという言葉。しかし、この割合は“馬八人二”という人もいるし、“馬六人四”という人もあって、どちらにどのくらいの比重を置くかは人それぞれ違う。
馬っ気(うまっけ)
 牡馬が発情した状態で、馬房内や、下見所で男性のシンボルを勃起させることをいう。下見所でこんな状態になるときは関係者が水をかけて静めたりするが、異常に興奮しているので競走能力に影響することが多い。比較的レース経験の浅い馬に見かける現象で、キャリアを積んだ古馬は下見所で馬っ気を出すことはほとんどない。
馬なり
 調教やレースにおける脚いろの表し方のひとつで、馬の行くままという意味。騎手が補助動作(手綱をしごいて追ったり、ステッキを入れるなど)を加えない走りぶりのことで、“持ったまま”とも言い、通常は幾分余力のある状態を指す。ただ、馬の気性によって馬なりでも能力をほとんど出し切っている場合もあるし、追わないとまったく走らない馬もいるので、個体差があることを知っておきたい。また、レースでゴール前追わずに勝ったときなど「持ったままだった」とか、「馬なりだった」という。
馬主(うまぬし)
 競走馬の所有者のこと。中央競馬に馬を出走させようとするものは、まず馬主登録を中央競馬会にしなければならない。馬主には個人、法人、組合の3種類がある。日本中央競馬会競馬施行規程では、登録を拒否するものとして、成年後被後見人、被保佐人及び破産者で復権を得ないもの、禁錮以上の刑に処せられたもの、競馬に関与することを禁止または停止されたもの、調教師、騎手、厩舎関係者および競馬の公正確保上不適当と認められたもの、等は馬主登録ができない登録拒否対象者である。
馬の温泉(うまのおんせん)
 温泉を利用して馬の疾病を治療するための施設。福島県いわき市のJRA競走馬総合研究所常磐支所が有名で、ここには馬のプールもあり、故障馬の休養、トレーニングに多くの馬が利用している。馬の故障の多くは脚部の骨折、腱炎などで、温泉による治療効果は非常に大きいと言われている。また、プールは療養馬の運動不足を脚に負担をかけない水泳によって補い、馬体調整に役立っている。他には函館競馬場や、私設のものが山形県の蔵王、福島県の本宮、函館の大湯など全国各地に作られている。
馬番(うまばん)
 レースに出走する各馬に付けられた番号で、出走に際してはその番号ゼッケンを付けて出てくる。この番号の若い順(1、2、3……)がインコースからのゲートの順でもあり、枠番とは異なることもある。
馬道(うまみち)
 馬の通り道のことだが、馬場、調教コースへの出入りや、馬場を横切るときなどに通る定められた道を言う。馬専用の道でも厩舎の周りや逍遥馬道など馬の運動に使う道は馬道とは言わない。
裏開催(うらかいさい)
 中央(東京、中山、京都、阪神)開催が行われている時、同時に行われているローカル(福島、新潟、中京、小倉)開催のこと。しかし、札幌、函館は北海道開催といって中央開催と同時期に行われても裏開催とは言わない。
ウラスジ
 屈腱(深屈腱、浅屈腱)のことで、脚の裏側にあるスジということで言われる言葉。「ウラスジがもやもやして」とか、「ウラスジに熱をもって」など関係者の間でよく使われている。
うるさい
 馬の性格を表す言葉で、扱いやすく素直な気性の馬を“おとなしい”と言うのに対し、扱いにくかったり、気性的に難のある馬を“うるさい”といい、「うるさいところのある馬」などと使う。
上腹(うわばら)
 鞍を装着するとき1本の腹帯だと鞍ズレを起こしやすいし、破損した場合は危険なので、それらの予防のために鞍の上から腹帯の上にもう1本の帯を締めている。これを上腹という。


エアロフォーム
 空気抵抗のないように騎手の体にピタッとフィットした勝負服のこと。スピードを競うスケートやスキーの選手が着ている体にピッタリのユニフォームなどをヒントに作られたもので、見た目の格好良さもあって、近年使用している騎手も多くなっている。
エビハラ
 屈腱炎のことで単にエビと言うこともある。前肢に起こりやすい腱の病気で、管部の裏側が腫れてしまい、ひどくなるとエビの腹のようにふくれてしまうことからこの名が出た。1度エビハラになると完全に回復させることが難しく、関係者泣かせの病気である。
えん麦(えんばく)
 馬の飼料としての穀類の一種で、日本でもっともよく使用されている。えん麦は日本産のえん麦(内麦)と外国産のえん麦(外麦)とに分けられている。外国産のえん麦の方が固形分が多く実が締まっており、蛋白質、脂肪、その他の栄養分が内国産のものより多い。そのため与え方の量は内麦と外麦では異なり、栄養過多にならないように厩舎関係者は十分注意をしている。カイ食いが良い悪い、また何升食べているなどは、このえん麦の食いの速度、量などのことである。


追い切り(おいきり)
 各馬の出走日(土・日)の2、3日前の水、木曜日に最後の仕上げとして追われる調教のこと。この追い切りという言葉には多分に一杯に追うという意味あいがある。出走に際しての調子の把握と馬体の調整を目的とするので、単に速いタイムを出すということだけでなく、動き(脚いろ)の良し悪しがポイントとなり、これを見分けるのがトラックマンの仕事。本紙では“調教短評”“調教解説”などで各馬の状態を詳細にお届けしている。またこの追い切りの日を追い日と呼んでいる。
追い込み(おいこみ)
 レースの前半は隊列の後方に位置して直線で先行馬に迫るタイプの戦法を追い込みといい、その馬のことを追い込み馬という。先行馬あるいは逃げ馬と対比されるタイプで、強い馬は追い込み馬といわれた時代もあったが、こういったタイプは他力本願になりがちでスローペースだと取りこぼすことも多い。
おいでおいで
 騎手が後ろを振り向いて後続馬との間隔を見定めるほどの余裕のある勝ちっぷりのことで、他馬をまったく問題にしないで楽に勝つこと。
大穴(おおあな)
 大きな配当のこと。元来は予想外の欠損という意味だが、賭事においては予想外の結果という意味が生じ、競馬では人気のない馬が勝って、高配当になった場合をいう。
おかぐら
 馬の耳は普通はピンと立っているものだが、横に垂れている馬もときに見かける。これが神楽舞の獅子の耳に似ていることから、おかぐら耳といわれるようになった。耳のつけ根にゆるみがあり力強さはないが、“お神楽にソツなし”と言って喜ぶ人もいるように馬の能力に関係ない。昭和48年オークス馬となったナスノチグサがこの耳だった。また、フランスでは“ジェベルの耳”と言っている。
置き障害(おきしょうがい)
 障害コースには固定された障害が設置されているが、これとは別に障害レースの時だけ平地のコースに置く障害のこと。片面竹柵、両面竹柵があり(一部は高さを変えることができる可動式障害)グリーンウォールやハードルなどの呼称がついている。
抑える(おさえる)
 馬の行くままに任せるのではなく、騎手が手綱を絞ってスピードをセーブすること。逃げ馬の場合ならペース配分を考えてのことだし、追い込み馬なら力をタメるために抑えてレースを進めるもの。極端な抑え方をすると馬が掛かってしまうこともあり、無理なく抑えられるかどうかは騎手の技量によるところが大きい。また、調教でも「抑え気味に追った」などと使われるが、オーバーワークにならないように加減して追うことをいい、調教やレースで騎乗者の指示通りスピードをセーブできる馬を“抑えの利く馬”といっている。
オッズ
 馬券の概算払い戻し率のこと。競馬場の掲示板や場内テレビなどに示されている数字がそれで、トータリゼーターシステムのコンピューターに直結されている。
お手馬(おてうま)
 いつも同じ騎手が調教し、またレースに騎乗していて、その馬の癖や性格など熟知している馬のこと。“お手馬手綱いらず”という言葉があるくらいで、これは安心してみていられる馬と騎手との関係を表している。一般にはベテラン騎手や有名ジョッキーの方がうまいとされているが、若手や見習い騎手でも乗り慣れた馬の場合「この馬はお手馬だから」というように一目置かれることもある。
尾花栗毛(おばなくりげ)
 馬の毛色の一種で、栗毛の中で前髪、たてがみ、尾の先などが白いものをいう。尾がススキの穂(尾花)のように見えるためこう呼ばれる。走っていて目立つし美しいので、一線級になればファンがつきやすい。
重い(おもい)
 「馬体が重い」とよく使われるが、重っくるしいという意味。素軽さがないということで、「動きが重い」ともいう。体重が増えて目方が重いときも同じように「重い」という言葉が使われているが、前後の内容とニュアンスで使い分けられている。似た言葉に太いというのがあるが、これはあくまで外見上太く見えるということで、馬体が絞り切れない状態のこと。また、馬場が悪いときは「下(馬場)が重い」などという。
折り合い(おりあい)
 馬と騎手との呼吸の調和状態のこと。騎手が抑えたいのに行きたがって抑えが利かないこともあるが、こういう状態を「折り合いを欠く」、または「折り合っていない」「折り合いがつかない」などという。逆に騎手の思いのままレースをしている姿は折り合いのついた状態である。折り合いがつかないと馬の能力を出し切れないため、ジョッキーは皆この折り合いをつけることに全力をそそいでいる。人馬一体になることを「鞍上人なく鞍下馬なし」というが、これは折り合いのついた状態を表す言葉である。また、折れ合いという人もいるが意味はまったく同じである。
下ろす(おろす)
 競馬に初めて出走させること。「次の開催の初日に下ろそう」というように使う。また障害戦に初めて走らせるときも「障害に下ろす」という。
親子丼(おやこどんぶり)
 ひとつのレースで同じ厩舎、または同じ馬主の馬が1、2着を独占することをいう。一般に「〇〇(厩舎または馬主の名前)の親子丼」というように使われている。
オーナーブリーダー
 馬主であり、生産者でもある人のこと。もともと生産者である人が、馬を他人に売らず走らせるようになった馬主もいるが、馬主がよりよい馬を安く手に入れるという目的で生産牧場をもつというケースも多いようだ。
オーバーシード
 競馬場の芝コースは野芝が張られているが、秋以降になると枯れてくるし道悪での競馬があると傷みも激しくなるため、この野芝の上に冬場に強い洋芝の種をまき、冬期でも緑の芝生で競馬が出来るようにしている。このことをオーバーシードと呼んでいる。’91年の阪神競馬場から始まり、現在冬期に競馬の行われる競馬場で実施されている。
オープン
 オープンレースといえば、すべての馬が出走できるレースのことをいい、オープン馬とは最高条件(賞金で分けられたクラスを超えた収得賞金の多い馬)のことである。どの馬にも開放されているのがオープンレースの主旨だが、現状のオープンレースでは「未勝利馬を除く」「〇〇万以下の馬を除く」といった条件がつけられているので、ある程度賞金を稼いでないとオープンレースには出走できない。また、オープン馬イコール素質馬という意味合いもあり、条件馬であっても「オープン級の器」などと使われることはよくある。