再騎乗(さいきじょう)
 “落馬再騎乗”とも言い、レース中に落馬して競走を中断した騎手が、再度馬に乗って競走を続行することで、それまでは認められていたが、2017年1月1日よりルールの国際調和及び騎手と馬の保護の観点から、競走において騎手が落馬した場合、再騎乗して競走を継続することを禁止された。
裁決委員(さいけついいん)
 着順の確定、異議の申し立てに対する裁決、出走馬及び騎手に対する保安措置と裁決、競馬の公正を害する行為の取り締まりなど競馬が施行される上で重要かつ絶対に必要な仕事を担当している。
再審査(さいしんさ)
 裁決委員によって課せられる馬に対する制裁で、レース中に斜行したり逸走した馬には走路調教再審査、ゲート入りの悪い馬、ゲート内での駐立不良、発馬の特に悪い馬に対しては発走調教再審査が課される。この再審査にパスしないと次のレースに出走できない。
下げる(さげる)
 レース中、騎手の判断で、意識的に馬順を下げること。他馬に寄られたり、挟まれたりしてやむを得ず下げることもあるが、末脚を生かす馬にとっては速いペースについて行っては持ち味を生かせないので、後方に下げてチャンスを待つこともしばしば見受ける。
笹針治療(ささばりちりょう)
 単に笹針と言うことも多い。ハリ治療の中でも最もポピュラーなもので、「三稜針」という針を用いるが、この針の形が笹の葉に似ていることから“笹針”と名づけられている。急性の筋肉疲労(コズミ)でうっ血している部分に施し、刺激によって新陳代謝をうながす。つまり肩や腰に乱刺して放血させ疲労を取り除くことである。使い込まれた馬が休養する前に笹針を打つことが多く、休養期間は最低でも1カ月ぐらい必要といわれている。
ササる
 調教、またはレース中に馬が内へ斜行することを言う。脚いろが一杯となって苦しくてササる場合と、馬自身の気性や癖でササる場合があり、後者の場合は左回りでササる馬は右回りになると“ヨレる”(外に斜行する)ことが多い。同じ斜行でも異なった意味で“モタれる”という言葉も使われるが、この三つの言葉にはっきりした区別がなくなってきている。
差し脚(さしあし)
 馬の脚質のひとつで、先行馬群を射程圏に入れて進み、直線の勝負で速い脚を使い前にいる馬を交わす。目標にした馬をキッチリ捉えたとき差し切ると言い、及ばなかったとき差し届かなかったという。また、一旦先頭に立った馬が後方からきた馬に並ばれ、あるいは交わされてから巻き返して先着したとき差し返すという。この差し脚を武器に戦うタイプの馬を“差し馬”といっている。
挫跖(ざせき)
 蹄底に起きる炎症(内出血)のことで、走っているときに後肢の蹄の先端を前肢の蹄底にぶつけたり、あるいは石などの硬いものを踏んだときに発症する。蹄底の浅い馬、時として踏み込みの良い馬にも起こりやすい。前肢に多く発症し、蹄に熱をもち、ひどい跛行になる。
殺処分(さつしょぶん)
 安楽死と言われているもので、競走馬が病気で倒れたり、脚を折って再起不能と診断されたときに殺処分することがある。競馬場でレース中に倒れた馬が出た場合、幕を張ってスタンドから見えないようにしているが、筋肉弛緩剤を注射して馬運車に収容するためであって、その場で殺処分することはほとんどない。
サラブレッド
 馬の品種のひとつで、単に「サラ」と言うことも多い。現在JRAではこのサラブレッドだけで競馬が行われている。イギリスで長い年月をかけて競走馬として作られてきたもので、サラブレッドには「純血」という意味がある。一般用語としても家柄がいいとか育ちがいいという意味合いで“サラブレッド”という言葉は使われている。
三冠馬(さんかんば)
 3歳五大クラシックのうち皐月賞、ダービー(東京優駿)、菊花賞を制覇した馬を三冠馬という。これはイギリスの競馬にならったもので、英国では2000ギニー、ダービー、セントレジャーの優勝馬を三冠馬と言っている。またアメリカではケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントSの優勝馬を三冠馬という。日本の場合は菊花賞が秋に行われるため、異なった距離の三つのレースを勝つことは大変難しく、41年セントライト、64年シンザン、83年ミスターシービー、84年シンボリルドルフ、94年ナリタブライアン、05年ディープインパクト、11年オルフェーヴル、20年コントレイルの8頭がその栄誉に輝いている。シンザンが古馬の大レース天皇賞、有馬記念にも優勝し五冠馬と言われたが、シンボリルドルフ、ディープインパクトも五冠馬になっている。これに模して牝馬の三冠というのもあるが、桜花賞、オークス、秋華賞(95年以前はエリザベス女王杯)を制覇した馬で、86年のメジロラモーヌ、03年のスティルインラブ、10年のアパパネ、12年のジェンティルドンナ、18年のアーモンドアイ、20年のデアリングタクトの6頭だけである。
産駒(さんく)
 「〇〇の産駒」という使い方をされ、〇〇は一般的には父馬である種牡馬の馬名、たとえば“サンデーサイレンス産駒”という言い方をする。母馬がクラシック馬であったり有名な馬の場合は母馬の名を前につけて言うこともある。
三大始祖(さんだいしそ)
 現在世界中のサラブレッドについて、その牡系子孫が残っているのはダーレー・アラビアン、ゴドルフィン・アラビアン、バイアリー・タークを祖とする三つの牡系統である。このことを「三大始祖」または「三大根幹種牡馬」と言っている。この3頭のうち現在サラブレッドの90%以上がダーレー・アラビアン系で、圧倒的優位を保っている。
3分3厘(さんぶさんりん)
 ゴールまで約660メートルの地点のこと。一分が200メートルであることから計算されるわけだが、一般には3角過ぎの勝負どころという意味で使われる。騎手の話の中などでは「3分3厘から行って」とか、「3分3厘で手応えが…」など仕掛けどころという意味で使うことが多い。


仕上がり(しあがり)
 競走馬としての馬体のでき具合を表す言葉。無駄肉がなく、競馬に行って能力を出せる馬体になったとき「仕上がった」という。「仕上がりひと息」と言えば完調一歩手前ということだし、「仕上がり途上」と言えばまだ仕上がっていないという意味となる。
ジェイ・アール・エー(JRA)
 日本中央競馬会の略称で、87年4月に制定されている。ジャパン・レーシング・アソシエイションの頭文字をとったものである。
JRA育成馬
 JRA育成馬とは、JRAが全国のサラブレッド1歳馬市場で購入し、JRAの施設で育成された馬たちのこと。02年までは、「抽選馬」と呼ばれていた。また、09年からは日高育成牧場で生産したサラブレッド(JRAホームブレッド)もJRA育成馬に加えられた。JRAでは、これらの馬を用いて、「強い馬づくり」のための生産育成研究や生産育成技術の開発を行い、その成果の普及、啓発に努め、生産育成分野のレベルアップに取り組んでいる。JRA育成馬は2歳春、JRAブリーズアップセールなどで売却され、デビュー後はレースという舞台で、JRAの生産育成研究の成果が試される。
ジェーンビット
 中折れしない棒状の銜身を口の外側へ延長し、その延長部の両端に手綱を装着する金環が、更に銜身の口から出た部分に下顎をくるむ金属枠がついたもの。金属枠によって銜身が口内の正しい位置に固定される上、一般的なハミと違いテコの作用が加わるので、手綱の操作が通常より強力に口角に伝わり、ヨレる癖のある馬に効果がある。
仕掛ける(しかける)
 騎手が馬にスパートさせること。ひとつのレースの流れの中から加速(ペースアップ)させることだが、騎手は気合を入れるため手綱をしごいたり、ステッキを入れたり補助動作を加えてスピードアップを捉す。「3コーナーで仕掛ける」「仕掛けが早かった」などレース後のインタビューなどでさかんに使われるが、勝敗に直接関係する言葉だからだ。また「仕掛け気味に追う」ということもあるが、この場合は気合をつけながらという意味で使われている。
軸馬(じくうま)
 連勝式(連勝複式)で中心(軸)になる馬のこと。同じ本命馬でも勝てなくても2着は外さないタイプ、取りこぼしはあっても堅実なので大きく崩れることはなく連勝には絡んできそうな馬のこと。成績は安定しているが決め手不足という馬が“軸馬”といわれるレースもしばしば見かける。
自在(じざい)
 競馬用語として使われる場合は脚質のひとつの“自在脚質”のこと。「自在型」あるいは「自在性がある」という使い方をされるが、先行もできるし差したり追い込んだりもできるということで、ペースが速ければ抑えていけるし、逆に遅ければ前に行って戦えるという近代競馬向きの脚質。“器用な馬”とか“脚質に幅がある”というのも同じことで、どんな流れにも対応できるタイプで安定感がある脚質。
市場取引(しじょうとりひき)
 一般には「せり取引」と言われるもので公開のせり市場で売買されるため、その価格が他人にはっきり分かるようになっている。
下見所(したみしょ)
 パドック、または曳き馬場といわれるところで、発走の約30分前に装鞍所から入場、人に曳かれて場内をぐるぐる回る。掲示板には出走馬名、騎手、斤量、馬体重などが発表され、同時に各種勝ち馬投票券のオッズが表示されている。ファンはここで各馬の状態を観察、馬の仕上がり具合や気合の乗り方など確かめる。発走の15分前くらいになると騎手が騎乗し、ここから馬場に出ていく。
失格(しっかく)
 入線した順位が取り消されて着を失うこと。
極めて悪質で他の騎手や馬に対する危険な行為によって、競走に重大な支障を生じさせたと裁決委員が判断した場合、走路外逸走したときにその地点に引き返さないでレースを継続した場合、定められた時間を超えて入線した場合、負担重量の不足(前検量から後検量の重量を差し引いた重量が1キログラム超過)、その他、禁止薬物の使用、不正協定の実行等が失格事由として定められている。
なお、競走から5年以内に禁止薬物の使用、不正協定の実行が判明した場合には、当該馬は失格となるが、投票券上は変更されない。
終い(しまい)
 レースの最後という意味で、「終いが甘くなった」とか「終いでいい脚が使えた」などと使われ、レース後の騎手の話によく出てくるように、直線あるいはゴール前を指す。「終い(の脚)を生かす」という使い方もするが、この場合は馬の力をタメて最後の直線で能力を出すということ。
遮眼革(しゃがんかく)
 ブリンカーといわれるもので、以前は遮眼帯といわれていたもの。競走中に他馬に気を使ったり、物見(ものみ)をして走る癖のある馬に、レース中、気を散らさず集中させるように、前方だけしか見えないように作られた革製の装具。遮眼革にも遮眼角度の違いから形の異なるもの、覆面につけられたものなどいろいろあり多種多様である。気性の激しい馬(悪い馬)などには、初めて使用したとき特に効果が出ることもあり注意したい。
斜行(しゃこう)
 競走中に馬が斜めに走ること。他馬の進路を妨害したり、事故の原因となることも多く、騎手がレース中に注意義務を怠ったものとされ、軽度の場合は戒告、非常に重大なものは騎乗停止まで、その度合によってではあるが、何らかの制裁の対象になることが多い。また、障害競走において飛越の際に斜めに飛ぶことを斜飛(しゃひ)という。
シャドーロール
 鼻の上に着けたり、巻いたりしている羊の毛などで作られた太いモール状の装具。競走馬は自分の前脚の動き、物の影や芝の切れ目などに驚いて跳んだり、立ち止まったりすることがあり、それを防ぐため(下が見えないようにする)の装具。
15−15
 1ハロン(200メートル)を15秒平均のスピードで走る、または走らせること。14―14、13―13も同じで調教でのペースを表す言葉。「普通のキャンター」と言われるのが1ハロン20秒ぐらいで、「大きめ」というと17〜18秒で駆けることをいう。15―15というと馬を仕上げる上でのひとつの目安で、デビュー前の馬や休み明けの馬はこの15―15ができると最終段階の強い調教へと進んで行く。また、使い込んでいる馬の場合は「レース間隔が詰まってるから15―15で十分だ」などと、タイムとは関係なく軽い攻め馬という意味で使っている場合も多い。
重賞(じゅうしょう)競走
 特別競走の中でも特に賞金が高く、重要な意義をもって設けられた競走で、五大クラシックレース、天皇賞、有馬記念をはじめグレード競走と言われるレースはすべて重賞競走である。特別競走の中で第〇回と付されているのが重賞競走で、オープン馬で争われる。
収得賞金(しゅうとくしょうきん)
 収得賞金は競走条件(クラス)を区分するための賞金のことを言う。中央競馬のレースの場合、レースで第1着(重賞競走は2着まで)となったとき、算入金額は出走したレースの競走条件に応じて、3勝クラスでは900万円、2勝クラスでは600万円、1勝クラスでは500万円、新馬・未勝利競走では400万円、などとなっている。
習癖(しゅうへき)
 運動時や馬房内で馬の行ういろいろな癖の総称。調教や飼料の管理、馬とのコミュニケーションなどによって矯正していく必要があるが、競走中の癖については騎手がその馬の癖を熟知して騎乗しないと事故の原因になったりする。
蹴癖(しゅうへき)
 人や他馬を蹴る癖のこと。蹴癖馬は周りの馬や人に危険を及ぼすので、トレセンや牧場では危険防止のため、目印として尾の根本に赤い布を着け誰にでも分かるようにしている。
出走停止(しゅっそうていし)
 競走の公正を保つため
(1)競走において他馬に危害を及ぼすおそれのあるとき。
(2)調教が十分でないとき。(発馬なども含む)
(3)健康に支障のあるとき。
(4)一時的に能力を高めまたは減少したと思われる薬品、薬剤を使用したとき。
(5)競走に関して不正な協定の実行、不正な目的に供せられるおそれのあるとき。
などは、期間を定めてその馬の出走を停止する。
出走取消(しゅっそうとりけし)
 出馬投票後、出走予定馬が急な疾病、事故などの理由により、裁決委員の許可を受けて出走を取りやめること。競馬場、ウインズなど勝ち馬投票券売場には必ず発表されているので、取消馬のあるなしは確認しておきたいものだ。
種牡馬(しゅぼば)
 “種馬(たねうま)”ともいわれるが、父馬のこと。より速く、より強い馬を作り出すためにサラブレッドの生産において種牡馬の選定はとくに大切であり、競走成績の優れた馬、血統の良い馬のみが選ばれて種牡馬となっている。
準(じゅん)オープン
 競走馬は競走番組上条件別に分類されているが、オープンに次ぐクラスで、いわゆる「3勝クラス」に位置する馬。そのクラスを勝つとオープンになる馬自体を指すこともあるし、そのクラスのことを準オープンと言うこともある。
馴致(じゅんち)
 一般的にも段々に馴らすことを馴致というが、競走馬の場合でも同じである。広い意味で言えば、生を受けた馬を競走馬に仕上げていく過程は全て馴致ということになる。初期の段階の馬装馴致(鞍を置いたりハミを着けたりする)に始まり騎乗馴致(人を乗せ騎乗者の意志に沿うようにする)、調教馴致(発走を含め競走馬としての仕上げ)と進んでいく。
昇級戦(しょうきゅうせん)
 勝つことによってクラスが上がることを昇級するという。その昇級してはじめてのレースを昇級戦(昇級緒戦)といっている。「昇級戦にしては走っている」とか、「昇級戦でペースが…」などレース後の騎手の話によく出てくる。
条件(じょうけん)レース
 中央競馬は収得賞金によってクラス分けされ、条件が定められている。どのレースも広い意味での条件レースに違いないが、オープンや新馬戦、未勝利戦、重賞レースなどは条件レースとはいわない。3歳(4歳)上1勝クラス、3歳(4歳)上2勝クラスといったレースのことである。また、条件が付けられていても、特別レースは一般レースと分けて考えられ、条件レースとは呼ばない。
勝負服(しょうぶふく)
 騎手がレースに騎乗するときに着ている服。中央競馬の場合は馬主がそれぞれ自分の色、柄の服色を登録しており、騎手は馬主に合わせて着替えてレースに出場している。競走中に各馬の識別が容易にできるように、模様のサイズ等が決まっているほか、似たような服色は登録できない。
ジリ脚(あし)
 脚質のひとつ。決め手がなく速い脚が使えないタイプで、ジリジリとしか差を詰められないというのが語源。こういった脚質の馬は平均ペースになると粘りを発揮するが、瞬発力がないため勝てそうでいて勝てなく、2、3着になることが多いので、単勝では狙いにくいタイプといえよう。
白毛(しろげ)
 馬の毛色のひとつで、白色またはほとんど白色で生まれるが、うなじや耳などに色素があることもあり、有色毛の刺し毛斑や有色斑があることもある。また、眼が青色であることも多い。この毛色の発現はサラブレッドでは十分解明されていない。
白旗(しろはた)
 スタート時、ゲートから200メートルくらいの走路内に立っている人が持っている旗。発走委員が真正な発走でないと認めて振る赤旗を見て、この白旗が左右に振られる。騎手はこの合図を見て馬を止め、スタートのやり直しとなる。
シンジケート
 一般には共同販売を行うための企業連合をいうが、競馬の世界では主に種牡馬について組織される株主のことで、1頭の種牡馬を数十株に分けて、その保有株数に応じて種付けの権利を持つことになる。通常組まれる株数は40〜60株で、1株につき1頭の種付け権利を持つ。
新馬戦(しんばせん)
 サラブレッドのデビュー戦のこと。夏の2歳戦から始まり3歳春の3月頃まで競走番組に組まれている。新馬戦はその馬の能力だけでなく競走センスも分かるため競走馬にとって重要なレースであり、馬主、生産者など関係者は新馬勝ちをことのほか喜ぶ。
心房細動(しんぼうさいどう)
 心臓発作のひとつで、競走中に発症する場合が多い。急激にスピードダウンして、骨折でも起こしたのではと見てる人に思わせる。健康な馬でも突然発症する病気で、原因も明らかでないし、その治療法も特にない。そのまま競走馬を断念するような場合もあるが、ほとんどは一過性のもので、自然に治ってしまい再発もしないことが多いようだ。


末脚(すえあし)
 最後の直線での脚勢のこと。ゴール前の伸び脚のいい場合「末脚が切れる」というし、逆にゴール前にきて踏ん張りの利かない場合を「末脚が甘い」などという。競走馬にとってこの末脚の良し悪しは強さ、資質を表すものである。
スクミ
 筋肉が硬直することで「肩にスクミが見られる」などと使われる。疲労の蓄積や、急激な運動などに起因することが多く、休養や運動(調教を含む)の軽減によって回復する。
スクーリング
 一般用語では面接授業(通信教育の学生に行う)をいうが競馬用語としては、はじめての競馬場でレースをする馬に前もって下見をさせることをいう。馬運車での輸送、競馬場へ着いてからは装鞍所、パドック、馬場への出入り、コースでの足慣らしなどすべてを経験させる。
スタミナ・インデックス
 種牡馬の産駒の平均勝ち距離(2歳戦、障害戦を除いて計算されたもの)のことで、「平均スタミナ」ともいっている。これによってある程度産駒の距離に対する適応性を知ることができる。しかし、日本に限らず世界の競馬界で競走距離が短くなる傾向にあり、スタミナよりスピードに重点がおかれ、あまり重要視されなくなっている。
ステイヤー
 長距離(2400メートル以上)レースで好成績を挙げるスタミナ豊富な馬のこと。長距離戦は重賞・特別レースが主で一般レースにはほとんどない。中距離戦に勝った馬が次第に長い距離にも慣れて勝つというのが日本の競馬の仕組みで、本質的なステイヤーが育つシステムにはなっていないようだ。菊花賞や春の天皇賞は正にステイヤー活躍の場だが、ともすると前半緩いペースになり、後半1マイルだけの競馬になったりして、本当の意味でのステイヤーだけが勝っているとはいえない
スパイラルコース
 第1、第3コーナーのカーブへの入りが緩やかで、後になるほど急になり、最終的に第2、第4コーナーを鋭角に回るように設計された競馬場で、まるで螺旋の中心に向かって走って行くように徐々にカーブがキツくなることからこう呼ばれている。JRAでは東京、中山、札幌以外の各競馬場で採用されている。
スパーピン
 飛節内腫の俗称。飛節の前内側に骨瘤が発生する関節炎で、関節を構成する骨が完全に化骨していない若馬に、強い調教をさせたりすると発症しやすい。また、古馬でも飛節の曲がった馬や歩行時に飛節を捻るような馬には発症することがある。
ズブい
 馬自身が積極的に走るタイプではなく、騎手が補助動作(手綱をしごいたり、ステッキを入れるなど)を加えないとレースの流れについていけない馬を“ズブい馬”といっている。こういう馬は追われ通しでいてもバテないので上がりのかかるレースで突っ込んできたりする。エンジンのかかりが遅いので短距離戦向きではない。「古馬になってズブさが出てきた」などといわれることもあるが、当初、素軽い動きをしていた馬でも、レース経験を積むに連れてズブくなることはあり、必ずしも悪いことではない。馬がレースを覚えていく段階で「いい意味でのズブさが……」と使われることもある。
スプリンター
 ステイヤーの反対で短距離(一般に1400メートル以下)戦に強い馬をいう。長距離戦と違って条件戦でも特別、一般レースを問わず短距離レースは数多く組まれており、スプリンターの活躍の場は多い。以前は短距離レースは軽く見られ、一流馬の出ないレースというイメージもあったが、現在はスプリンターズS、高松宮記念などG1レースもあり、スプリンターに対する価値観も変わってきている。


生産牧場(せいさんぼくじょう)
 競走馬を生産、育成して、その馬を売却することを目的にしている牧場。単に牧場ということの方が多いが、育成だけを行っている「育成牧場」と区別するために生産牧場といっている。繁殖用の牝馬を所有し、種牡馬の選定、交配に始まり、生まれた馬をトレーニングセンターや競馬場の厩舎に入れる時、または育成牧場に送るまでの馴致や育成を行っている。
せったる
 凹背のこと。背中の線がたるんでいることで、前後躯のバランスが悪い馬が多い。軽度のものは競走能力に影響ないといわれているが、斤量が重くなると負担が大きくなるともいわれている。
攻め馬(せめうま)
 一般に言われている調教のこと。調教といっても他の動物の場合と違って馴らすこと以外に走る能力を引き出すこと、走る能力を出し切れる状態(馬体を仕上げる)に持っていくことなどを含んでいる。その目的のために連日馬場に入って走る練習を繰り返しているが、これを攻め馬または追い運動といっている。出走するための最終段階の調整における攻め馬を「追い切り」といって、通常の攻め馬と区別することが多い。
せり
 競売のこと。「市場取引」または「せり取引」といわれるように公開の市場で売買される。生産者が“お台”(希望価格)をつけ、購買者がせり上げていく価格の決め方で、他人にもその馬の値段が分かるようになっている。現在は当歳、1歳、2歳、繁殖馬セールなど市場取引も多様化してきている。
競る(せる)
 競り合うともいうが2頭以上の馬が並んでお互いに前へ前へと一歩でも先に行こうと争いながら進む状態をいう。逃げ争いという形が一番多く目につくが、好位を取り合って競ることもある。レース中に競り合うと余分な力を使うことにもなり、末脚を失くすことも多いようだ。
背割れ(せわれ)
 競走馬は馬体を絞り、スマートな形に仕上げて行くわけだが、まだ絞り切れないで背中に無駄肉がついている状態をいう。「まだ背割れしているので……」などと仕上がり途上の馬に使われる。
先行(せんこう)
 読んで字のごとしで先に行くことだが、競馬で「先行」といえば逃げるということだけを指すのではなく、前から3番手ぐらいまでに行ける(頭数によっても異なるが逃げ馬について行ける)ことを指す。
前日追い(ぜんじつおい)
 競走日の2〜4日前ぐらいに追い切られた馬が、競走日の前日に最終の調整を目的に軽く(場合によっては強めに)追うこと。本紙はこの動きを重視し“直前変り身診断”として掲載。レース検討の一助としている。
疝痛(せんつう)
 疝痛とは馬の腹痛のことで、急性胃拡張(過食疝)、急性腸カタル、風気疝(ガス腹)、便秘疝、腸捻転などの総称をいう。馬の腹部臓器は疝痛を起こしやすい構造となっており、馬の内科的疾病として昔から最も代表的なものとされており、しかも発生頻度が高く致死率も高いので恐ろしい病気のひとつである。
セン馬(せんば)
 去勢された牡馬のこと。去勢の効果、目的としては、気の悪さの解消のほか、中年太りの解消・予防、筋肉を柔らかくする、完歩(ストライド)が伸びるなど、多目的で去勢が行われる。また、セン馬はG1では朝日杯FS、ホープフルS、皐月賞、NHKマイルC、ダービー、菊花賞には出走できない。
喘鳴症(ぜんめいしょう)
 普通「ノド鳴り」と言われているもので、喉頭部を支配する神経が麻痺し、そのため喉頭口が狭くなり呼吸のたびに「ひゅうひゅう」または「ぜいぜい」といった狭窄音を発する病気である。競走馬は全力疾走の時、多量の空気を呼吸するため、この病気があると呼吸困難を起こすこともあり、競走能力に影響することが多い。
旋毛(せんもう)
 馬の「つむじ」のこと。馬の被毛は直立して生えないで、皮膚面に対し傾斜して生えるため、体表面に毛流ができる。その起始部や終止部が渦巻き状になっており、これを旋毛という。この旋毛はできる部位によって呼び名も異なり、19種に細分されている。よく耳にするところでは珠目(しゅもく・額、鼻梁など顔)、吭搦(ふえがらみ・頸の下部)、髪中(かみなか・たてがみの生えぎわ)、双門(そうもん・胸前両側上部)、初地(しょち・前膊および管)、沙流上(さるのぼり・脛(すね)および後管)などがある。


装鞍所(そうあんじょ)
 通常レースに出る馬は発走の60分前までに装鞍所に入らなければならない(施行規定101条)ことになっている。装鞍所では馬体重の計量、出走する馬に違いないかどうかを確かめる個体鑑別、健康検査(禁止薬物の影響下にあるかどうかの検査を含む)、蹄鉄の検査などが行われ、その後、あらかじめ騎手が持って検量された鞍を装着する。そして、ひとつ前のレースの発走時刻になると下見所に曳き出される。装鞍所では薬物だけでなく水や飼料など一切与えることが出来ない。また、装鞍所には競馬監督官、競馬会の職員、その競馬に関係する調教師、騎手、厩務員以外は開催委員長の許可がなければ出入りできない。
装蹄師(そうていし)
 馬の削蹄、装蹄をする人。蹄鉄は一定期間毎に削蹄して打ち替えられるが、競走時には競走用の蹄鉄(アルミニューム製の勝負鉄)を走る前に打つ。蹄は馬体を支える基礎であり、運動上重要な部分である。したがって、削蹄、装蹄は直接・間接的に馬の能力に大きな影響を及ぼすので、競走馬にとって装蹄師の役割は大きい。装蹄師になるには、(公社)日本装削蹄協会が実施している1年間にわたる講習会〈全寮制〉を受講し、認定試験に合格する必要がある。
総流し(そうながし)
 連勝式の馬券の買い方のひとつで、1頭(枠)の軸馬を決め、他の全ての馬(枠)を相手に選ぶことである。“流し買い”というのも同じ。
相馬(そうま)
 馬格(馬の体型、外観)の見方を昔から相馬といっている。これは長い経験が必要とされ、簡単には説明できないが、常識的には全体として均整がとれ、骨量に富み、比較的に幅があり、しかも品があり、皮膚の薄い感じのものがいい馬と言われている。
ソエ
 管骨瘤や管の炎症の俗称。若駒によく見られる症状で、急激な調教や過度の調教、装蹄の悪い場合などによく起きる。ソエそのものは固まれば競走能力に支障はなく、焼いて固めることが多い。2歳戦では「ソエが出ていたので…」とか「ソエが固まったので…」などよく使われる言葉だ。
外回り(そとまわり)
 競馬場によって内回りと外回りの2つのコースをもっており、中山では向正面、京都、阪神、新潟では3〜4角にかけて内外に分かれている。中山の外回りは内回りに比べかなり高くなっており、2角及び3角のカーブが緩くなっている。京都、阪神、新潟は内回りに比べて直線の距離が、それぞれ約75メートル、120メートル、300メートルもちがうので追い込み型の馬に有利なコース形態といえよう。
外枠発走(そとわくはっそう)
 発馬癖の悪い馬など馬番に関係なく出走馬の一番外側に入れられ発走していた時代もあった。これを外枠発走というが、現在はゲートの当該枠が破損するなどして使用できなくなった場合や、ゲート内で暴れて他馬に影響を及ぼすと認められた馬が外側のゲートに入れられ外枠発走となることがある。外枠発走の場合本紙では各馬の成績欄(能力表)に12頭立てでもプラス2の14ゲートと記しており、外枠に回されたことが分かるようになっている。
ソラを使う
 レースや調教時の走行中における馬の癖で、走ることに対する集中力を欠いてしまうこと。直線でソラを使う馬はよく見かけるが、他馬と並んでいるうちは一生懸命走っていた馬が先頭に出て1頭になった途端に急激にスピードを落とすようなケースである。